早村慎平は、愛車の白いオープンカーのハンドルをとり、怪物の後を追って高架のハイウェイを飛ばしました。 「いかん、このまま行くと、その先は‥‥。」 やがて行く手に海岸線が見えてきました。そしてそこには、わが国が誇る『超光子エネルギー研究所』があるのです。早村は、背広の胸ポケットから小型トランシーバーを取り出しました。 「山田部博士、山田部博士、応答願います、どうぞ!」 一方、研究所でも、この怪物の襲来にそなえるべく緊急配備の命令が下されたところでした。 「こちら超光子エネルギー研究所、山田部だ。おお、君か早村君。いや、心配には及ばん。わが方には新兵器『高密度収束光子エネルギー銃』がある!」 山田部博士は余裕たっぷりに答えました。 「だめです、博士!」 「なんだ、君は高密度収束銃の威力を疑うのかね?」 「いや、高密度収束銃の威力は信じています。だが、その威力が逆に問題なのです!」 早村の声に博士はただならぬようすを聞いてとりました。 「‥‥どういう事だね?早村君‥‥!」 「いいですか、山田部博士。あの化け物の体の中には、ミス・メリー博士が人質に取られているのです。もし高密度収束銃を使えば、確かにあの怪物ロボットは木っ端みじんに吹き飛ばせるでしょう。しかしそれでは、同時にミス・メリーの命もありません!」 「なんだって!?それじゃあ‥‥。」 沈黙する山田部博士。その時研究所が、不気味な地響きに襲われました。ついに怪ロボット・デンジボタルが、超光子エネルギー研究所に到達しようとしているのです。 「我々には、もはや打つ手は無いのか‥‥。科学を悪用して人々の幸せを踏みにじる、トンガリヘッドのような卑劣漢に対して正義はこんなにもろく崩れ去ってしまうというのだろうか‥‥?」 ドドーン、ドドーン‥‥。デンジボタルの恐ろしい足音が、もうすぐ近くに聞こえます。山田部博士の持つ超小型テレビ受像機に、ひとりでに電源が入り、そこにあのいやらしいトンガリヘッドの顔が大写しになりました。 ![]() 「贈り物だと?ふざけるのもいいかげんにしたまえ。お前なぞにくれてやるものは何も無い!我々は断固として戦うぞ!」 突然、研究所が大きく揺れ、博士をはじめ研究所員の面々は、床に叩きつけられました。そして窓の外に怪ロボットの顔がぬうっと現れたのです。 「聞いているよ、山田部君。君の素晴らしい研究の成果は。きょうワガハイが受け取りにあがった品物というのはほかでもない、そこにある『高密度収束光子エネルギー銃』だよ。わかるねえ?」 山田部博士の顔が怒りにゆがみました。 「なんというひきょうな‥‥。」 「いいかね?ようく考えて返事をしたまえよ。こちらには可愛らしいお客様がいらしているのだ。そちらがうっかり手荒なまねでもして、お客様にもしものことがあってもいかんだろう、え?‥‥さあ、わかったら黙って高密度収束銃をワガハイによこすのだ!」 |
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