「だめ!!」
そのとき、受像機の画面に、いきなり一人の少女が割って入りました。メリー博士でした。
「高密度収束銃を渡してはいけない!私はどうなってもかまいません。こんな悪漢の言うことをきいてはだめ!そんなことをしたら世界はメチャメチャにされてしまいます。」
「このあま!」
「きゃっ!」
トンガリヘッドがメリー博士をつきたおしました。小型トランシーバーを通じて一部始終を聞いていた早村は、思わずハンドルをたたきました。
「トンガリヘッドの奴!レディーに手を上げるとは、許せん!!」
キキーッ。乾いたブレーキの音を響かせてオープンカーが研究所に到着し、さっと飛び降りるわれらが早村慎平。トンガリヘッドは山田部博士とのやりとりに夢中で、幸い気づかれてはいないようです。デンジボタルは、研究所をのぞき込むようにして、動きを止めたままになっています。
「チャンスだ。どこかに内部への出入り口があるはずだぜ。」
勇敢にも早村は、デンジボタルの巨大な足にはい登り、単身メリー博士の救出に向かったのでした。
「さあ、どうするね、山田部君。君さえ首をたてに振れば、なにもワガハイはこのデンジボタルの強力な触角でもって研究所をあとかたもなく破壊したり、東京じゅうに火を放って見渡すかぎりを焼け野原にしたり、そんな野蛮な事はしやしないさ。はーっはっはっはぁ!」
悔しさにこぶしを握り締めて、山田部博士は絞り出すように言いました。
「‥‥やむを得まい‥‥‥。」

 すべてが万事休すかと思われたそのときです。あたりをゴオーッと突風が駆け抜けました。早村は飛ばされまいと、必死でデンジボタルの胴体に突き出た排気管にしがみつきました。そして空を見上げ、あっと声をあげました。東の空に遠くぽつんと、何か重金属のような鈍い光沢を持つ巨大な物体が、くるくると回転しながらこちらに向かって猛スピードで飛んで来るのが見えます。
「あ、あれは二年前のあの時、トンガリヘッドの人工島で見たのと同じ‥‥。」
その物体はあっという間に研究所の上空に飛来すると、回転はそのまま空中にぴたりと静止しました。次の瞬間、物体は回転を止め、鉄がきしむような音をたてながら、その姿を変型させ始めたのです。丸みを帯びた太い胴体から、二本の腕と二本の脚が、そして最後に不気味な一つ目が開いた円すい形の頭部が、ニョキニョキと生え出てきました。早村も、山田部博士を始めとする研究所員たちも、ミス・メリーも、その場のすべての人々が唖然としてただ事の成り行きを見守るしかありませんでした。ただひとり、怪博士トンガリヘッドその人だけは、突然現れた鋼鉄の巨人に、怒りをあらわにして叫びました。
「また現れたか、めざわりなクズ鉄ロボットめ!いつもワガハイの計画が達成まであと一歩のところにしゃしゃり出ては邪魔だてしおって。今度という今度は容赦せんぞ!ゆけ!デンジボタル!!」
謎の鋼鉄ロボット デンジボタルが触角をふりあげて戦闘態勢にはいりました。
「ええい、ままよ!」
突然激しく動き始めたデンジボタルに振り落とされかけて慌てた早村は、巨大な胴体の部分にいくつか並んであいている、どこに通じているのかわからない通風口のような狭い穴の一つに、体をすべりこませました。
 ドドーン!鋼鉄の巨人は急降下してくると、無造作に着地しました。なにしろ身の丈三○メートルはあろうかという鋼鉄の巨人です。その衝撃で、大地が地震のように大きく揺れました。研究所をはさんで相対峙する二つの巨大ロボット。果たして新たに繰り広げられるこの闘いの行方は如何に?そして、またも早村の窮地に現れた謎の鋼鉄ロボットの正体とは!?物語は謎が謎を呼ぶ次回へと続く!待て、次号!!

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